「移動式縁側」は、千葉のまちなかで人々の想像力や対話を引き出すことを目的とした、可動式の小さな公共スペースである。パーツを組み合わせて構成されたこの装置は、鑑賞者にとってはアート作品であり、参加者にとっては触れたり動かしたりできる道具でもある。
本プロジェクトでは、千葉駅周辺の見過ごされがちな場所にこの「縁側」を設置する。人々は、都市への思いや不満、こうであったらよいという願いをキューブに書き込み、自由に動かすことで、空間をともに構築していく。
名称の由来である「縁側」は、日本の伝統的な住宅に見られる、屋内と屋外をつなぐ中間的な空間である。本作は、誰もが気軽に立ち寄り、会話が生まれ、ひと休みできるような場を目指している。
プロジェクトは、リサーチ、設計、制作、設置、運用、更新という6つの段階を経て展開される。公共空間を、単なる通過点や機能的な場としてではなく、人々が共に関わり合いながらつくり上げていく「共創の場」として捉え直す視点を提示している。本プロジェクトは、アートと都市計画のあいだに橋を架ける試みである。壮大なスペクタクルを目指すのではなく、都市に息づく日常の手触りや小さな違和感、そして未来への手がかりを、市民の感覚にそっと届けようとする方法論である。
【市民参加のかたち】ワークショップ参加/展示鑑賞