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Tele-Interference Counterpoints (in Chiba)

アーティスト
上野 悠河

>>9/19-11/24 展示情報はこちら

「Tele-Interference Counterpoints (in Chiba)」は、廃棄予定の蛍光灯を千葉市内で回収・整備し、複数台のラジオやスピーカー等を組み合わせて、光と音によるインスタレーションとして「再生」する/させる一連のプロジェクトである。

本プロジェクトでは主に、市内各所から蛍光灯を集める「回収フェーズ」と、集めた蛍光灯による明滅する光の展示を行う「展示フェーズ」で構成される。

本作の背景として、従来の蛍光灯が2027年に製造・輸出入禁止となる、いわゆる「蛍光灯2027年問題」がある。実際に、転換期にあたる現在は各所で蛍光灯の置き換えと同時に廃棄を伴う流れが加速している。これまで作者は捨てられかけた蛍光灯を各所から集め作品に用いてきたが、本プロジェクトの「回収フェーズ」では交換→廃棄のプロセスの間に、回収に加えて地域を巻き込んだ蛍光灯に関する対話のコミュニケーションを組み入れる。講演やワークショップを通して、蛍光灯の仕組みから実態を再認識しつつ、消えゆく蛍光灯の印象や経験を共有し記録することを本フェーズの目標とする。

「展示フェーズ」では集めた蛍光灯を明滅させ、複数台のラジオ、スピーカー等を組み合わせて、展示作品としての「Tele-Interference Countepoints (in Chiba)」を構築する。チカチカと明滅する蛍光灯から発せられる電磁波がラジオの電波に干渉し、さまざまなノイズとなって発音される仕組みの本作は、その光と音が集積・氾濫することで新たな表情を生み続ける。電磁波に道具の機能、ラジオの音声とノイズを対立・衝突させることで、新たな切り口から“もの”本来の性質: “もの性”があらわれる現象を「カウンターポイント」(対位法)と示したインスタレーション作品である。

展示と並行して、回収フェーズやイベント・ワークショップにおいて記録した素材にまつわる記憶、経験の共有といったコンテクストやプロセスをオープンにし、映像やパネルなどの形態で発表する。

光と音のゆらぎは懐かしさやペーソスを想起させる一方、世代によっては新鮮なメディアとしても映る。さまざまな人の印象や想い、そして組み合わさることで変化し続ける時空間を、ふたつのフェーズで多層的に提示していきたい。それまで身近にあった/無くなりつつある蛍光灯を通じて、“もの”と“もの”、“もの”と人、人と地域、消費と循環、記憶と未来をつなぐ美術の役割を、本プロジェクトを通して追究する。

【市民参加のかたち】
材料提供/イベント・ワークショップ参加/展示鑑賞

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スケジュール

・2025年7月~8月 蛍光灯回収
・2025年7月頃 イベント①「まず、蛍光灯とは何だったのか?」
・2025年9月1日~9月17日 回収した蛍光灯の集計、設営
・2025年9月19日~11月24日 展示
・2025年9月〜11月
イベント②「Tele-Interference Counterpoints Open Summit」
イベント③「レディオウェーヴ・サウンドスケープ! ―見えない電波の音風景を聴く―」

このプロジェクトの拠点

このプロジェクトのイベント・展示

このプロジェクトのレポート・コラム

上野悠河「まず、蛍光灯とはなんだったのか?」イベントレポート

Tele-Interference Counterpoints (in Chiba)
「まず、蛍光灯とは何だったのか?」ー蛍光灯にまつわる講義と対話ーが、2025年8月3日に千葉市美術館講座室にて開催されました。定員を超える申し込みが寄せられ、その関心の高さを実感できる場となりました。 上野氏が長年アート作品の素材として用いてきた蛍光灯。実はこの蛍光灯は、2027年をもって製造および輸出入が禁止されることをご存じでしょうか。私たちの暮らしの中でごく当たり前に存在してきた蛍光灯は、LED等に置き換わり、水銀を使用する光源としての歴史に幕を下ろそうとしています。 イベント前半では、上野氏による「蛍光灯」の講義が行われました。蛍光灯がどのような仕組みで光を生み出しているのか、その発展の歴史、そしてなぜ禁止されるのか。大学の講義さながらに資料を用いながら、「まず蛍光灯を理解する」という入り口から探求が始まりました。 後半は対話の時間に移り、雰囲気も和やかに。上野氏は蛍光灯に惹かれてきた自身の体験や記憶を語り、それをきっかけに参加者一人ひとりが「生活の中で消えていったもの」について意見を交わしました。 カセットデッキ、VHS、MDといった記録媒体を通じたコミュニケーションの思い出。街角の風景をつくっていた電話ボックスの記憶。ダイヤルを回す音と重ねて積んだ10円玉の記憶。ある参加者は「モノ」は消えても概念として残っている例を挙げました。PCの保存アイコンがフロッピーディスクであり続けること、電話マークがスマートフォンではなく古い受話器で描かれることなど。また蛍光灯そのものについても、「頻繁に交換をする」という行為が記憶と結びついているといった声も上がりました。 参加者同士の語らいは、懐かしさや共感、時に笑いを交えながら広がっていきました。改めて「なくなっていったもの」が意外なほど多く存在することに気づかされると同時に、それぞれがモノにまつわる豊かなエピソードを持っていることが印象的でした。技術や製品が移り変わるなかで、私たちはそれらを通じて行動や考え方を変え、また思い出を刻んできたのかもしれません。 この対話は、9月6日(土)に予定されている次回イベント「そして、蛍光灯は何になるのか?」ー蛍光灯と美術史の解説と実践ーへとも繋がり、さらに9月19日から始まる上野悠河氏の展示作品へと発展していくことでしょう。 次回のイベントは制作中の作品「Tele-Interference Counterpoints (in Chiba)」の展示会場で開催予定です。作品を稼働させてみたり、さまざまな器具を組み合わせて起こる現象を体感してみたり、作品の一部になってみたりと、展示とは異なったかたちで「作品」にアプローチしてみます。1回目に参加してない方も楽しめますので奮ってご参加ください。 「そして、蛍光灯は何になるのか?」蛍光灯と美術史の解説と実践日時:2025年9月6日(土)14:00〜16:00(開場:13:45)会場:第一山崎ビル9F(千葉県千葉市中央区富士見2丁目9−28 第一山崎ビル)JR・京成千葉駅徒歩7分参加費:無料対象:どなたでも参加可定員:20名(先着順)申し込みはこちらから 執筆:土肥武司(千葉国際芸術祭2025アートプロジェクトマネージャー )
Tele-Interference Counterpoints (in Chiba)