ヨーロッパで サウンド・スカルプチュアを発表すると
未来派の影響について 質問されることがある
ファシスト党のイタリアとナチス・ドイツ
大日本帝国の同盟が脳裏をよぎった
私は返答した
20世紀後半に生まれた日本人として
私はアメリカ経由の未来派だ
宇治野宗輝《プライウッド・シティ・ストーリーズ1》(2017)より
千葉市の近代化の基礎は、20世紀初頭に「軍都千葉」と呼ばれた、大日本帝国陸軍所属の鉄道連隊を中心とした大規模な軍備施設にあった。軍都として近代の幕があき、20世紀後半に完成した現代的な都市文化を持つ首都圏の都市。当プロジェクト開催予定地はその中心部に位置する二階建ての空き家。この風化した鉄骨とモルタルで出来た和式の引き戸の建造物一棟を使用して、20世紀の痛みと享楽が、戦争と平和が、つながる過去と現在が、多面的に立ち上がる豊かな空間を一般的な工業製品を組み合わせてつくる。
主な展示予定作品:
《ホーミー&ザ・ローテーターズ》Homy and the Rotators, 2023
宇治野が2000年代初頭から取り組んでいる、20世紀のマスプロダクトをDIYの技術で再構成したリズム・セクション「ザ・ローテーターズ」と、2017年より制作を開始したナラティブな動画作品の、それぞれの時間軸を統合しようと開始した実験的なプロジェクト。vコンシューマー・テクノロジーを組み合わせたサウンド・スカルプチュアのビートに乗って、100歳になる宇治野の母が生まれ故郷の満洲で最も好きな食事だったいう、餃子の思い出について語る。
《リファービッシュド・タンスロボ》Refurbished Tansu Robo, 2025
宇治野が「20世紀の日本人の自画像」と呼ぶオリジナルの《タンスロボ》は2010年に発表したインスタレーション《ザ・バラッド・オブ・エクステンデッド・バックヤード》の一部だが、近代を修復するプロジェクトの一環として《リファービッシュド・タンスロボ》を地域で調達した材料を使用し再生、2025年に新たに再起動する。
《ロスト・フロンティア/ルートホーム》Lost Frontier – Route Home, 2025
2023年に発表された《ロスト・フロンティア》は、満洲で生まれた宇治野の母が移民の家族の一員として過ごした満洲での個人的な経験を語る映像作品である。鉄道連隊の前身である鉄道大隊が旧満州と旧朝鮮に建設した鉄道路線がひとつの軸となっている。現在の千葉からロスト・フロンティア――かつて存在した、帝国主義の時代の未開拓の地域/境界:映像に登場する満洲――を旅する、より鉄道にフォーカスした新作映像作品。
【参加方法】制作参加/素材提供/展示鑑賞