シティゲーム
コーディネーター日誌:《千葉シティゲームウィーク》レポート
2025.12.28
アーティストのシー・ユシン(史宇昕/Shi Yuxin)さんは、千葉での一ヶ月の滞在を通して、都市の中に潜む「ゲームの舞台」を探し出し、それらを一週間にわたって開放する「千葉シティゲームウィーク」として再構成しました。
彼女のリサーチ手法は一貫して「歩くこと」ですが、その歩行は単なる観察にとどまらず、都市そのものを遊びへと変換する試みでもあります。
シー・ユシンさんのプロジェクトに伴走した、アートプロジェクトコーディネーター・胡 听雨の視点でレポートします
1.都市ゲームの構成と理念
「千葉シティゲームウィーク」は、千葉市内の異なる場所で毎日行われる短時間の都市ゲームです。固定の参加者はいません。通りすがりの人々すべてがプレイヤーとなり得ます。
シー・ユシンさんは、地図、水筆、古い地図、材料など、最小限の介入だけを行い、残りは都市そのものの状況に委ねました。
プレイヤーの記録は集計され、最終的には文化堂ビルのショーウィンドウで発表されました。
2. 各ゲームの展開
木曜日|アルファベット・ワードパズル(新宿公園)
公園の敷石がそのまま解答スペースとなり、プレイヤーは与えられたヒントをもとに空欄を埋め、「?」からできる単語を探します。散歩中の人々が足を止め、気軽に解いていく様子が見られました。

金曜日|切り株迷路(通町公園)
通町公園南側にある古い切り株のひび割れを、そのまま迷路の図柄として使用。プレイヤーは水を含ませた筆でひびをなぞりながら出口を探します。水跡はすぐに蒸発し、痕跡を残さない、ごく軽やかな介入となりました。

土曜日|常盤橋オセロ(常盤橋)
橋の近くに設置された公共の地図柱が、巨大な立体オセロ盤として再構築されました。プレイヤーは「交差点」に石を置き、都市のルートを陣地として獲得していきます。静的だった地図は、対局によって新たな動きを得ました。

日曜日|新旧地図マッチング(千葉駅北口)
プレイヤーは制限時間5分以内に、新旧2枚の地図の同じ場所を紙テープでつないでいきます。都市の変遷が一目で明らかになり、日常的に通り過ぎている場所にも、かつての姿があったことに気づかせるゲームでした。

月曜日|積み上げゲーム(千葉公園)
PUMPTRACK CHIBA前の広場で、用意された材料を自由に積み上げ、最も高い塔を作った人が勝者となります。安定を重視する人もいれば、思い切った高さに挑戦する人もいて、個性がよく表れる回でした。

火曜日|高いところで謎解き(稲毛海浜公園)
大型の野外彫刻が「塔」となり、プレイヤーは頂上まで登って隠された「20世紀からのメッセージ」を探します。見つけた答えは、頂上に設置された拡声器で叫んで報告します。海風と声が混ざり合い、儀式のような雰囲気を帯びたゲームとなりました。

水曜日|総合結果発表(文化堂ビル)
一週間で記録された最高得点が集計され、ショーウィンドウで発表されました。都市のあちこちで生まれた瞬間が、一つの時間線にまとめられる形となりました。

3. 参加者と観察
現場では、バスを待つ学生、散歩中の高齢者、仕事帰りの会社員など、さまざまな人々がふらりと参加していきました。多くの人は、これがアートプロジェクトであることを特に意識していません。ただ「面白そうだから」足を止めた自然な参加です。
この偶発的な参加こそが、シー・ユシンさんの作品の核心にあります。ゲームは、日常空間にごく小さなずれを生み、人々に都市を少し違うリズムで体験させる社会的な仕掛けとなりました。
4. まとめ
「千葉シティゲームウィーク」は勝敗そのものを目的としたものではなく、都市を“遊ぶことができる場”として再設定するプロジェクトです。シー・ユシンさんは、最小限の道具と最も開かれた仕組みによって、街路、公園、海辺を一時的なゲーム空間へと転換しました。
一週間を通して、千葉という都市は、より軽やかで、柔軟で、再解釈可能な姿を見せてくれました。そしてゲームそのものが、人々と都市との関係をそっと変えていく契機となったと言えるでしょう。
執筆:胡 听雨(千葉国際芸術祭2025 アートプロジェクトコーディネーター)