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まちばのまちばり

「まちばのまちばり」、本会期のワークショップ「〇〇の人」がスタート!

2025.06.19

アーティスト・西尾美也によるアートプロジェクト「まちばのまちばり」のワークショップ「〇〇の人」がスタートしました!

「まちばのまちばり」は、アートの手法で、テーマに沿ってユニークな服づくりに取り組むワークショップ。
今年2月に開催したプレ企画では、全5回のワークショップから展示まで大いに盛り上がりました。
芸術祭本会期である今年度も満を持して、夏から秋にかけて全8回のワークショップを展開していきます!

2025年6月14日、プレ企画から通算して第6回目のワークショップが行われました。
今年度もプレ企画と同様、全ての回で共通のテーマとして掲げているのは「〇〇の人」。各回異なるテーマに合わせて、服づくりにチャレンジしていきます!

今回のテーマは「色の人」でした。10名の参加者が、「色」という共通のテーマに沿った服を制作します。自分で色を1色選び、その色を地域から集めたたくさんの古着の中から選び出し、繋ぎ合わせて服づくりをするというもの。色を選ぶ、という行為は普段何気なく行っていることかも知れませんが、実はとても個人的な思いが投影される行為でもあります。

好きな色以外にも、あえて好きではない色、その時の気分の色、似合わないけど憧れの色、なぜだか惹かれる色…みんな思い思いの色を決めたら、たくさんの服の中から自分のテーマの色の素材を見つけ、服づくりの構想を西尾さんに相談します。

西尾さんのアドバイスは常に、アーティストの視点に立っています。
制作者の意向を丁寧に汲み取り、あなたのアイデアのここがいい、さらにこうするとよりおもしろくなるのでは?ということを的確に伝えてくれるので、参加者の気づかないような「斜め上」なアイデアを投げかけてくれることも。
参加者にとっては、脳内がアップデートされるようなワクワクする時間です。

西尾さんとの面談を終えたら、あとはひたすら制作です。
ミシンに触れるのは学生以来、という方もちらほらいましたが、そんな不安も制作を始めてしまえば吹き飛んでしまいます。
また、ミシンは苦手だから全て手縫いで!という方もいたりして、各々が自分のスキルに応じてより良い方法を模索しながら制作に奮闘していました。

おおよそ2時間ほどの制作時間、大人も子どももワイワイおしゃべりしながら夢中になって手を動かし、自分の「色」を作品に込めていきました。

最後に、出来上がった作品を自分で身につけ、写真撮影をしてワークショップは終了!

みんな本当にいい顔!
みなさんの笑顔からは、このワークショップをやり遂げたことへの誇らしさや喜びが溢れていました。

会場の西千葉工作室が、完成した作品たちでまるでパレットのようにカラフルに彩られた今回のワークショップ。
たくさんの色の記憶とともに、服そのものや「着る」「つくる」ということへの新たな思いも参加者それぞれの胸に刻まれたのではないでしょうか。


執筆:上原理恵(千葉国際芸術祭2025アートプロジェクトコーディネーター )

このレポート・コラムのプロジェクト

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西千葉 エリア
千葉の街場で、町のテーラーが活躍する環境をつくるプロジェクト。従来の仕立て屋のように完璧・完成を目指す服作りではなく、まち針で仮留めしたような工作としての自由な服作りで街に貢献する。 ワークショップ「〇〇の人」では、各回異なるテーマで参加者がユニークな服づくりに挑戦。作品に使うのは、まちの中から集めた服たち。ワークショップに4回以上参加すると、特別ワークショップ「オーダーメイドの人」に参加することができ、服づくりを完成させると「まちまちテーラー」に認定。市民アーティストとしてのまちまちテーラーに認定されると、そのユニークな発想・手法をもとに、町の仕事着や個人からの注文など、町の服を仕立てていく。 本会期中に現れるインスタレーション「まちまちいちば」は、まちまちテーラーの仕事場/商品見本市/商談の場である。まちまちテーラーが作った商品が陳列された「巨大な商品棚」のイメージで、観客はその中を巡り、ジャングルジムで遊ぶように、ユニークな商品と触れ合う場を作る。構造体の周りには、足踏みミシンが設置され、まちまちテーラーの仕事場となる。このように、まちまちいちばは、観客が商品やテーラーと出会う場になり、オーダーメイド制作の受注の場となる。 ユニークな服作りと市場は街場に新しい交流を生むだろう。まちまちテーラーとまちまちいちばが千葉のまち針となって、人と人の関係を繋げていく。 【市民参加のかたち】ワークショップ参加/ワークショップ運営/作品制作/素材提供/展示鑑賞
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まちばのまちばり 第7回ワークショップ「よごれた人」開催レポート

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2025年7月5日(土)、西尾美也によるアートプロジェクト「まちばのまちばり」では第7回目のワークショップを行いました。 今回のテーマは「よごれた人」。 10名の参加者が、思い思いのやり方で服をよごし、そのよごれが消えないように保存するには?を考えながら、デザインに落とし込むということにチャレンジしました。 まずは「服をよごす」という工程からスタートです。 普段の生活でも、ついつい服をよごしてしまうことってありますよね。 そんなとき、みなさんはどんな気持ちになりますか?「なにやってんの…」と自分を責めたり、「お気に入りの服に限って…」と悔しい思いをしたり。一方で、大切な誰かがつけたよごれや、懸命に仕事をしたあとのよごれには、愛おしさや誇りを感じることもあるかもしれません。 参加者のみなさんの服のよごし方も、まさに十人十色。 夢中で絵を描いていたら袖がよごれているのに気づかなかった 掃除していたらいつの間にか服が真っ黒 溶けたアイスがポタポタと…など。 よごし方の選択にも、きっと各々の生活様式や過去の記憶に紐づいたエピソードが詰まっているのでしょうね。 それにしても、オフィシャルに服をよごしていいなんて滅多にできない体験だからでしょうか、みなさん心の底から楽しんでいる様子でした。 思う存分に服をよごしたところで、そのよごれをどう保存、定着させるかを西尾さんに相談します。この面談の時間が、「まちばのまちばり」のキーポイント。例えば、ペンキでよごした人にはペンキの色と同じ色の糸を使って刺繍をする、絵を描いていてよごれた人には、描いた絵をそのまま服のどこかに転写してみる、目立たないよごれを探すクイズを出したいという人には、それならウソのよごれもつけて混乱させちゃおう、など、西尾さんから出てくる思いもよらない提案が、みんなの思考をいい具合にかき回してくれます。 西尾さんとの面談を終えたら、完成まで一気に駆け抜けます。今回はミシンだけでなく、刺繍や手縫い、絞り、版画などバラエティ豊かな手法が飛び出しました。みなさん自分の作品だけでなく、他の参加者の作品にも興味津々で、「どうやってよごしたの?」「どんな風に保存するの?」と、自然に会話も盛り上がります。 ワイワイおしゃべりしながら制作に没頭する様子は、まるでお祭りの準備を楽しむかのよう。出来上がった作品を自分で身につけ、写真撮影をしてワークショップは終了です。みなさん本当におつかれさまでした! 最後に西尾さんから、このワークショップを通じて「よごれ」をポジティブに捉えられるようになるといいですね、というお話がありました。よごれがこんなにも素敵なデザインに変身するなら、服をよごすことが怖くなくなるかも!そう思えてしまうほど、みなさんの作品はどれも個性的で魅力に溢れていました。 執筆:上原理恵(千葉国際芸術祭2025アートプロジェクトコーディネーター )
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中間成果発表展「ぞろぞろ、〇〇の人たち」開催レポート

まちばのまちばり
2025年3月、ZOZOSTUDIOにて「まちばのまちばり」中間成果発表展『ぞろぞろ、〇〇のひとたち』を開催しました。 今回の展示はアーティスト・西尾美也さんによるアートプロジェクト「まちばのまちばり」の千葉国際芸術祭2025のプレ企画として開催した全5回のワークショップを通じて生まれた「〇〇の人たち」が並びました。 会場であるZOZOSTUDIOには、突如たくさんの洋服が吊るされ、普段のカフェ空間ががらりと表情を変えました。 テーブルや椅子などの什器たちも展示とともに場をつくってくれたようで、“見る”だけでなく、作品に触れたり、試着したり、装うことを実際に体験できる空間となりました。 会場には、ワークショップの様子をまとめた記録集も用意し、各回のテーマの意図や参加者の思いをお読みいただけるようにしました。 お茶を飲みながら記録集を片手に、じっくり作品を味わうご夫婦。「何やってるの?」と、隣の広場からふらりと顔を出す少年。作品を自分の感覚で“装ってみる”ファッション好きの学生さん。 幅広い世代が、それぞれ自然体で作品との時間を過ごされているのが印象的で、展示がまちと交わっているなと感じる瞬間でした。そしてそれぞれの視点から生まれた作品が、来場者の「たしかに、そういうことあるよね」と共感や、「そんな見方もあるのか」という気づきを生み出していました。 服って、“着る”だけじゃない。服づくりは、人と人の関係をつくり、まちの記憶を縫いとめる。そして、自分自身と向き合うための行為でもあるんだなと感じた展示でした。 また、ワークショップでは西尾さんは「こうつくるべき」という形を示すのではなく、参加者の中にある視点や記憶をすくい上げるように、それぞれの表現がのびのびと生まれる場をひらいてくれました。 その在り方こそが、この展示のやわらかさや多様さにつながっていた気がします。 今回は中間発表で、作品も、関係も、まだ仮留めの状態。これからどんなふうに交差し、重なり合っていくのか。その“途中”をひらくことが、「まちばのまちばり」らしさでもあります。 今回、5日間の会期で429名の方にご来場いただきました。 「次は参加したい」「自分も何かをつくってみたい」そうした声がいくつも届いたことが、何よりの励みです。 服という日常的なものを通じて、他者と、まちと、アートと出会う。この展示が、その小さな入口になっていたとしたらとても嬉しいです。 最後に、この展示がかたちになったのは、会場協力・古着提供をしてくださった株式会社ZOZOさん、開催準備や当日の運営を担ってくださった株式会社マイキーさん、そしてファシリテーターのみなさんの力があってこそでした。 ご来場いただいたみなさま、ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました! 撮影:池ノ谷 侑花(ゆかい)会場協力・古着提供:株式会社ZOZO開催準備・運営協力:株式会社マイキー、ファシリテーターのみなさん
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まちばのまちばりの5回目となるワークショップを開催しました

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2025年2月16日開催回のテーマは「のりしろの人」。のりしろとは、紙や布をつなぎ合わせる際の余白のこと。この考えを応用し、服に「関わりしろ」を作ることで、他者と関わるきっかけを生み出すデザインを考えました。 西尾さんは、このテーマに合わせて、成分表示や洗濯タグがたくさんついたニットを着用していました。このタグは滑らかな肌触りで、赤ちゃんが好む感触なのだそう。タグを多く配置することで、触れたり引っ張ったりできる関わりしろを意図的に作った服です。さらに、Tシャツを縦につなげた、4人で着用できそうな服や、生地の角にフードを2つ付けたブランケットなども紹介されました。これは、二人でくるまりながら着用することを促すデザインです。 まずはいつも通り土台の服を選び、第4回でもおこなったように、西尾さんとの面談を経て制作に移ります。関わりしろという抽象的な考え方をどのように表現するのか、面談を通してアイデアを深めていきます。面談では、関わりしろの解釈がさまざまに広がりました。 特に、多くの参加者が「大切にしたい存在」を思い浮かべながら、関わりしろのアイデアを考えていたのが印象的でした。たとえば、高齢のお母さんやお孫さんと一緒に過ごすための服、野生のクマや飼っているカメとの関係を考えた服、さらには会場に設置された屋台に思いを馳せた服といったアイデアが生まれました。 夢中で作業しているうちに、あっという間に発表の時間がやってきました。蝶々を招き入れるために花柄のパッチワークを施した服や小さなお子さんを招き入れるためにロングスカートの膝の位置に袖をつけた服、背中合わせに二つのジャケットを縫い付けた服などさまざまな関わりしろのある服ができあがりました。 発表後は、それぞれの服を試着し、動きや関わりしろを実際に感じ取りました。背中合わせのジャケットは背中から袖までが縫い合わせてあり、一人が手を挙げるともう一人の手も連動して上がるというシンクロが生まれ、青系の服を5着つなげた服では、5人同時に着用して楽しみました。屋台を招き入れる服や、5着つなげた服は、一人で着るのが難しく見ている人が思わず手伝いたくなる、親切な関わりを生むデザインが目を引くものでした。 継続参加者が多い中、今回初めて参加した小中学生も、積極的に作業を進めていました。西尾さんをはじめ、参加者やファシリテーターが一体となり、新たな参加者を自然に受け入れる雰囲気ができあがっていたことも、このワークショップの関わりしろなのかもしれません。 最後に、今年度のまちばのまちばりの成果展示の開催を発表し、5回にわたるワークショップを締めくくりました。展覧会の詳細は、千葉国際芸術祭2025のウェブサイトやまちばのまちばりのインスタグラムなどでご案内いたします。
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まちばのまちばりの第4回目となるワークショップを2月15日(土)に開催しました!

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2025年2月15日(土)に開催されたまちばのまちばりワークショップのテーマは「かさぶたの人」。過去3回のワークショップで切り取られた服を、かさぶたのように再生することに挑戦しました。 西尾さんからは、切り取られた部分を元の形に戻す方法と、新しい形を加えて自由にアレンジする方法が示されました。第1回の「パッチワークの人」では、正方形の布を組み合わせる手法を用いましたが、今回はより自由な形をつなぎ合わせる方法も紹介されました。 まず、参加者は引き算された土台の服を選び、どのように再生するかを考えました。方向性が定まったら、西尾さんとの面談で、その方法を選んだ理由を伝えます。西尾さんからは、選んだ方法に意味を持たせることの大切さと、物語を込めることで必然性が生まれるというアドバイスを受けました。 面談を経て、参加者はいよいよ制作に進みます。火傷や水ぶくれをイメージした膨らみの表現や再生の途中で生じるバグのような現象の活用、たくさんの袖を魚の鱗のように縫い付けてボリュームを加える工夫など、それぞれが独自の物語を込めたアイデアを形にしていきました。 完成後は、一人ひとりが作品の意図を発表し、参加者同士で共有しました。そして、西尾さんがまとめとして、誰かが切ったものを受け取り、それに自分のアイデアを加えていくプロセスこそが今回の醍醐味であると語りました。ただ元の形に戻すのではなく、なぜこのように切り取ったのかを想像しながら物語を紡ぐことで、個々の発想が重なり合い、一人では生み出せなかった創発的なデザインが生まれました。これらのアイデアを共有し、今後の服作りに活かしていきます。 最後に西尾さんは、ワークショップを重ねる中で増えていく切られた服を、新しい服へと再生する「かさぶたの人」が、この活動の中でとても大切だと結びました。
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まちばのまちばり 第3回「音の人」を2月9日(日)に開催しました!

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今回のテーマは「音の人」。服の動きに応じて生まれる音を楽器のように捉え、音の仕掛けを取り入れた服作りに挑戦しました。 はじめに、西尾さんがテーマについて説明しました。西尾さんが初めて「音の人」のコンセプトに沿って制作したスナップボタンをたくさんつけた服や、大阪市・西成で行ったワークショップで参加者が制作したレジ袋を帯状にカットして縫い付けた服など「音の人」の例を紹介しました。 「音の人」のきっかけとなったのは、スポーツウェアの「シャカシャカ」と鳴る素材のように、服の動きによって発生する音です。スナップボタンは、つけたり外したりするたびに「パチッ」と音が鳴り、マジックテープやファスナーにもそれぞれ独特の音があります。こうした音を雑音ではなく「服が奏でる音」として肯定的に捉えられないかという視点から「音の人」の発想が生まれました。 今回のワークショップでは、シーグラスやそろばん、鍵、キーホルダー、ペットボトルのキャップなど、一見服作りとは関係のなさそうな音が鳴る素材も持ち寄り、試行錯誤しながら制作を進めました。西尾さんは、自身が着ていたニットベストの柄を例に、服に取り付ける素材を楽譜のようにリズムを意識して配置したり、楽器のシルエットを思わせる形に仕立てたりする方法を紹介しました。毎回、テーマに沿った服を身にまとう西尾さん。今回の装いも、参加者たちの注目を集めました。 ファシリテーターを務めるスタッフも、ボール盤で穴を開けたり、金属を糸鋸で切ったりしながら、フル回転で制作をサポート。初めて参加する人も、継続参加の人も、それぞれが自由に発想を広げ、より大胆な表現に挑戦していました。 最後は、自身が制作した服を着て合奏に挑戦。服の動きに合わせて鳴る音の仕掛けを楽しみながら、会場を歩いたり、列になって順番に音を鳴らしてみたり、それぞれの音を確かめ合いました。 参加者同士がセッションを重ねるように影響を与え合い、回を追うごとに、服の捉え方がより自由になっていく。その変化を実感するワークショップとなりました。
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まちばのまちばり 第2回「ちばしの人」を開催しました!

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2月2日(日)、まちばのまちばりの第2回ワークショップ「ちばしの人」を開催しました。あいにくの雨模様でしたが、7名の参加者が集まり、雨ならではの景色や街中にある形を発見しながら服作りに挑みました。 この日はまち歩きからスタート。気温もぐっと下がり、冬らしい空気の中、傘を片手に街へ繰り出します。西尾さんからは「10点以上の形を服に縫い付けたり印刷するので、できるだけたくさん撮影しておいてください」との指示がありました。参加者たちは通りを歩きながら、街の中の気になるフォルムを次々と撮影していきます。 視線はどんどん研ぎ澄まされ、目線を上下左右に巡らせたり、時には地面すれすれまでしゃがみこんで形を探したり。普段何気なく見ている街の景色も、こうして意識して見ることで、まったく違った表情が見えてきます。「雨だからこそ気づいた形があった」「水滴の反射で新しいパターンに見えた」といった声も上がり、天候もまた一つの要素として作用していきます。 1時間ほどのまち歩きを終えた後は昼休憩です。その間に撮影した写真を集め、午後はその中から特に気になるフォルムを10点に絞る作業に入ります。正面から見た形だけでなく、撮影したままの奥行きのある形を活かしたり、雨に濡れたブロック塀の模様を抽出したりと、同じ街を歩いたはずなのに、参加者それぞれの視点によって異なる「ちばしの形」が浮かび上がってきます。 そして、いよいよ服作りへ。今回の制作方法は3つあり、1つ目はアップリケ。選んだフォルムを切り抜いた台紙に合わせ、布を切り取り縫い付けていきます。2つ目はシルクスクリーン印刷。フォルムをそのまま布にプリントし、輪郭のはっきりとしたデザインを作り出します。3つ目はアイロンシートを使った転写。シートを熱で定着させ、布に直接形を貼り付けます。 それぞれの方法で、参加者たちは自分が見つけた「ちばし」の形を服に落とし込んでいきます。偶然の発見から生まれた形を、アップリケとして布に縫い付けたり、シルクスクリーンで印刷したりしながら、他にはない個性的なデザインへと仕上げていきます。 こうして完成した服は、まさに「ちばしの人」そのもの。参加者が集め、抽出した形は、今後の本会期での服作りにも活用される予定です。本会期での展開にも期待が高まります!
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千葉国際芸術祭2025 プレ企画「まちばのまちばり」ワークショップがスタート!

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アーティスト・西尾美也さんによるアートプロジェクト「まちばのまちばり」が、2月1日(土)にスタートしました。本プロジェクトでは西千葉を舞台に「〇〇の人」をテーマにした全5回の服作りワークショップを開催します。 第1回目のテーマは「引き算の人」と「パッチワークの人」。10名の参加者が、それぞれのテーマに沿って計20着の服を制作しました。 まず、西尾さんが「引き算の人」について説明し、その着想が奪衣婆(だつえば)に由来することを紹介しました。奪衣婆とは、あの世で亡者の衣を剥ぎ取り、木の枝のしなり具合で罪の重さを判断する老婆の鬼です。この考え方を応用し、服の生地を減らして軽くすることが「引き算の人」のコンセプトです。 また、西尾さんは「女子高生が制服のスカートを短くする行為や、肩出しのカットソー、破れたデニムなども視点を変えれば引き算の人と言える」と説明しました。 使用する素材は地域で集めた古着です。まずは各自が土台となる服を選び、最初の重さを測定。その後、丈を短くしたり、袖を落としたり、四角く穴を開けたりしながら、大胆に削ぎ落としていきました。西尾さんが用意した10cm~30cm角のダンボールをガイドに慎重にカットする人もいれば、感覚を頼りに思い切ってカットする人もいて、それぞれのアプローチで「引き算の人」の服が生まれていきます。 切り抜いた部分はそのままでもいいし、レースや薄手の生地を縫い合わせて新たなデザインを加えるのも自由。最後に再び計量し、服の重さが軽くなったことを確認すると、参加者たちはホッとしたような、達成感に満ちたような表情を浮かべていました。「引き算の人」という視点から、既存の服にはない新しいデザインが完成しました。 続いて「パッチワークの人」の工程へ。「引き算の人」でカットされた布や、別の古着を正方形に裁断し、中表(なかおもて)縫いでさまざまな色や素材、柄をつなぎ合わせていきます。チェック柄をあえて斜めに裁断して組み合わせたり、異なる色や模様を意識して配置したりと、個性あふれるパッチワークの布が次々と生まれていきました。最後に、それを土台の服に縫い付け「パッチワークの人」の服が完成しました。 こうして「引き算」された布が「足し算」され、新しい形が生まれた一日。服の重さだけでなく、ものの見方まで少し軽やかになったような気がします。
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