まちばのまちばり
まちばのまちばり 第10回ワークショップ「ポケットの人」開催レポート
2025.12.04
2025年8月23日(土)、西尾美也によるアートプロジェクト「まちばのまちばり」では第10回目のワークショップを行いました。
今回のテーマは「ポケットの人」。
前々回の「ファスナーの人」、前回の「ボタンの人」同様、数のノルマを設けたシリーズの完結編で、条件は「ポケットが20個ついた服」です。
これまで同様、何のためのポケットなのか、それをどうつければ目的は果たせるか?など、ひとつひとつのポケットに理由やストーリーを与えることが求められます。

夏休み終盤の今回も、子どもから大人まで9名の方が集まってくれました。
ワークショップ冒頭の西尾さんのレクチャーでは、ポケットについてのさまざまな解釈について、スライドを交えながらお話しいただきました。
一見普通の上着に見えても、実はたくさんのポケットが隠されており、災害時や非常時に必要なものを全て収納できたり、新聞紙などをしまうことで防寒の機能も持たせることができるサバイバル服。
ポケットをたくさんつけることへの意味づけが、わかりやすく提示された例として紹介してくださいました。
また、ヒントとして「〇〇を運ぶためのポケット」という考え方も。
例えば楽器ケースは、その楽器を運ぶためだけのかたちをしているが、これを「楽器のためのポケット」と捉えてはどうか、ということ。
〇〇を運ぶためだけにつくられるポケットが、四角形や半月型だけではないことは明白で、西尾さんの話を聞きながら、わたしは自分の脳内にある「ポケット」の可能性が無限に広がっていくのを感じました。

ベースになる服はいつも通り、無数に用意された古着の中から選びます。
今回は、ポケットの素材となる生地も古着から拝借。
シャツやパンツなどについたポケットをそのまま移植しても、もちろんOKです。
アイデアが固まったら、各自アイデアを西尾さんにプレゼンし、アドバイスを受けてさらにおもしろいアイデアへとアップデートします。
旅行に行ったときに、パスポートなどを身につけられる服
かたちのないもの(情報、感情、記憶などの概念的なもの)を入れるポケット
道端で拾ったどんぐりや枝を入れられるズボン
花を買ったときに挿して帰れる服
最初はふわっとしたアイデアも、西尾さんのアドバイスやお墨付きを頂くことによって、出来上がりのイメージに対する解像度がぐんと上がり、制作に向けてのエンジンがここで一気にかかります。



ファスナー10本、ボタン30個を経ての、ポケット20個という「ノルマ」にも、皆さん少し慣れてきたのか、あまり焦る様子もなく和気藹々とした雰囲気で、制作の時間は過ぎていきました。
まちばのまちばりワークショップでは、このように制作の手法もさまざまで、より自由度の高いものもあれば、数などの縛りがあるテーマのときもあります。
後者の場合、数をこなすことが目標となってしまうこともあるかもしれません。
それでもみなさんのアイデアは枯渇するどころかどんどん花開き、最後には奇跡的な作品が出来上がっているのです。
知らず知らずのうちに、どんな手法も楽しんでしまえる「なんでもこい!」的メンタルが身についているのかもしれませんね。
毎回新鮮なアイデアで素晴らしい作品を生み出すみなさんには、心から敬意を表します。
今回もポケット20個、大仕事でしたね!おつかれさまでした!



ポケットをつけ、そこに何かをしまうということは、自分と自分じゃないものの関係を考えることでもあります。
大切なものは内ポケットにしまう、買った花をポケットに挿して歩いたら、歩く花器になる、拾ったどんぐりが傷つかないようにポケットの生地はふかふかのものにしよう、自分の記憶をしまって我が子に継承する、……そこには一貫して「愛」があるような気がしてなりません。
西尾さんからは、テーマが違っても、その人らしさが出るというのがとても興味深く、それはアーティストと同じであるというお話がありました。
誰もが「愛」を表現するアーティストとなって、この服を着てこの街を歩いてくれたら、それだけで何かが変わるのではないか。
そんな兆しを肌で感じたワークショップでした。

執筆:上原理恵(千葉国際芸術祭2025アートプロジェクトコーディネーター )